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明後日朝顔プロジェクト21@金沢21世紀美術館

明後日朝顔プロジェクト218月、無数のアサガオが美術館を覆っていた。青、紫、ピンクが38度の暑い太陽に映えて、アクリル絵の具で塗ったような涼しい光線をはねかえしていた。蔦がカーテンのように円筒のガラスの壁を包み込んで、白いインテリアにまだらの影と緑色の木漏れ日を落としていた。建築が育っている、と感じられた。訪問5回目にしてそれが街に根付いて育っていることに驚嘆した。

オルブライト=ノックス美術館コレクションより パッション・コンプレックス展 ジム・ランビー「プラザ」2004年にオープンして間もない頃に訪れて以来、金沢21世紀美術館は私の心を離さなかった。美術館ならたいてい、未来人が発掘したらきっと権力者の墓場と間違えてしまうような、重厚で頑丈で永遠なる巨石を積んで出来ているものだ。しかし金沢21世紀美術館のボードの壁は、あまりに白く弱く、すぐに汚れて朽ち果ててしまうだろうと思っていた。それで心配になったのだろう。盆と正月には必ず金沢へ行って広坂へ足を運んだ。繰り返しそれがどうなっているか確かめに行った。壁は時には破壊的な芸術家の手に汚されたりもするが、白壁の大部分は常に新品のように白く、ガラスはいつも透明だ。展示は工夫されていて面白いから、老若男女、人がひきも切らず訪れている。いつでも掃除が行き届いていている。スタッフは年寄りも多いが、意欲満点で全然腐っていない。建築も展示も人も朽ち果てる気配がない。

明後日朝顔プロジェクト21このSANAAの建築は、金沢に息づいて新陳代謝するために、白く弱い素材でできているのだ。ホームページを見るとそれ以前の1998年頃から美術館が街で呼吸するための土壌作りがなされていたことがわかる。日比野克彦プロデュースの『明後日<あさって>朝顔プロジェクト21』でそれはまさに開花していた。2007年夏、暑い広坂で、私はやっと確信できた。携帯電話を出して夢中で写真を撮った。いつものカメラを忘れたことを後悔しながら、このまぶしいアサガオを忘れまいと目を細めて睨み付けた。

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『ボルベール <帰郷>』 棺桶と車

Volver [Original Soundtrack]強い風で枯れ葉が舞っている。女たちが墓の掃除をしている。墓は石でできていて風に揺るがず、死体を内蔵するのを待っている。それは女たちが死んだときに入る墓だ。そしてそれは子宮だ。女はそこに我が子を内蔵して、母として、生まれた子供の秘密を握る。子供は母をよりどころにするほかない。母が知っている秘密とは自分が他でもない母の子である証拠だ。誰も自分のよりどころを自分で持っていない。父にもない。子を内蔵し、その秘密を自分だけのものとするのは、女の特権だ。だから女たちは自分の墓を掃除するのだ。母の墓こそが秘密の最後の入れ物となり、迷った子供が涙する場所になるだろうから。

バッド・エデュケーションライムンダ(ペネロペ・クルス)の母イレネ(カルメン・マウラ)は火事で死んだという。だからライムンダの秘密は蔵される場所を失っていた。彼女だけでなく『ボルベール<帰郷>』に登場する女たち――姉ソーレ(ロラ・ドゥエニャス)、隣人アグスティナ(ブランカ・ポルティージョ)――は母を失っていて、イレネは幽霊のようにその中心にいた。彼女はすべての女たちの秘密を握ったまま幽霊になってしまった。実体がなくなってしまっては墓(あるのかないのか定かでないが)も女たちのよりどころにならない。実はイレネは身を隠して生きていたのだが、女たちはそれを知らなかった。

トーク・トゥ・ハー スタンダード・エディションライムンダが久しぶりにタンゴ『VOLVER(帰郷)』を歌い涙したのは、墓のない母イレネへのあてどもない墓参りのようだった。そして母もまた、車に身を隠しながらその歌を聞いていて、静かに涙した。母娘の秘密をめぐる思いが密かに通じる。その時車は、母を蔵し娘の秘密を宿す、棺桶だった。そこで母は泣きながら蘇りつつあったのだ。

オール・アバウト・マイ・マザーそれに先だって、母イレネはラ・マンチャでライムンダの姉ソーレを前にすでに蘇っていた。死んだはずのイレネの幽霊が出るという噂が聞こえているさなかだった。車のトランクからゾンビのように這い出て見せた。もはや幽霊ではない。一度死んだものが映画に蘇るには実体を持ったゾンビとしてでなければならなかった。そしてゾンビが登場するには墓や棺桶が必要だった。それには車やベッドが代用された。女たちの前へイレネは何度もゾンビ映画の文法を借りて蘇った。まるでパズルの欠けたピースを嵌めたように、女たちの中心へ、秘密を握る母としての役目を果たすためにイレネは蘇ったのだ。

ペドロ・アルモドバル DVD-BOX子宮と墓、棺桶と車、生と死、母と娘、女と男、マドリードとラ・マンチャ、ミステリーとコメディ……それらが際立ちながら重ね合わされた、完璧に近い構成の映画だ。むやみに関連させるべきでないかもしれないが、あえて、黒沢清と非常に近い、と思った。幽霊がゾンビになるからかもしれない。

ボルベール<帰郷> 公式ホームページ
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[2006スペイン/ギャガ・コミュニケーションズ][監督]ペドロ・アルモドバル[製作]エステル・ガルシア[製作総指揮]アグスティン・アルモドバル[脚本]ペドロ・アルモドバル[撮影]ホセ・ルイス・アルカイネ[編集]ホセ・サルセド[音楽]アルベルト・イグレシアス[出演]ペネロペ・クルス/カルメン・マウラ/ロラ・ドゥエニャス/ブランカ・ポルティージョ/ヨアンナ・コボ/チュス・ランプレアベ/アントニオ・デ・ラ・トレ
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『黒い眼のオペラ』(原題:黒眼圏) み、水を…!

黒い眼のオペラもはやツァイ・ミンリャンを語る上で「水」の存在は不可欠になってきています。スクリーンいっぱいに暗く澱んだ水が広がり、客席にまで押し寄せる大量の湿気、そして滴り落ちる漏水の音。『黒い眼のオペラ』においての、これら些細なはずの「水」のイメージ一つ一つは、映画に重苦しい意味を与えているだけでなく我々をも苦悩させています。終始水の存在が気になって仕方がなく、ずっと頭の中に染み付いてくるのです。

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